診断について/SIADHの診断基準

体液(細胞外液)量

「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」では、診断基準の主症候として脱水を認めないこととしています。

SIADHは、基本的に体内のナトリウムバランスを調節するレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系やナトリウム利尿ペプチド系に異常はないため、体液(細胞外液)量は正常から軽度増加の状態で維持されます。体液(細胞外液)量がほぼ正常の低ナトリウム血症のなかでは、SIADHは代表的な疾患になります。

SIADHの診断は除外診断で進めますが、はじめに脱水などの体液(細胞外液)量の異常を呈する病態や疾患を除外します。脱水の主な身体所見、検査所見を下記表に示します(表3)。

表3 脱水の所見
身体所見 皮膚ツルゴール低下、口腔粘膜乾燥、舌乾燥(縦皺)、腋下乾燥、眼球陥没、爪の毛細管再充満時間延長(成人:>2〜3秒、高齢者:>4秒)
バイタル 体重減少(体重の3%以上)、脈拍増加、血圧低下、起立性低血圧
検査所見 尿所見 尿量低下(<500mL/日)、尿比重上昇(>1,020)、FE UN<35%、尿Cl低下
血液検査 血清アルブミン上昇、ヘマトクリット値上昇、尿素窒素(BUN)/クレアチニン比の増加、ANP・BNP低下
循環動態 下大静脈径虚脱、中心静脈圧5cm H2O未満

山口秀樹ほか : 日内会誌. 2016; 105(4): 667-675. / 柴垣有吾. 監修/深川雅史. 体液電解質異常と輸液 改訂3版. 中外医学社;2019. P35-38. / 編集/今井圓裕ほか. 腎臓内科レジデントマニュアル改訂第8版. 診断と治療社; 2019. より作成

監修/有馬 寛. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日本内分泌学会雑誌;2023. P21-23.
柴垣有吾. 監修/深川雅史. 体液電解質異常と輸液 改訂3版. 中外医学社;2019. P70.

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